お客様導入事例:特許業務法人スズエ国際特許事務所
今回はAI検索エンジンを一緒に開発させていただいた、特許業務法人スズエ国際特許事務所の代表社員弁理士 赤堀先生、関根研究員、香取研究員にお集まりいただき、AIによる特許調査検索サービスと利用効果についてインタビューさせていただきました。
特許業務法人スズエ国際特許事務所(英語表記:S&S International PPC)は、110年の歴史を誇る特許事務所です。
所在地は、東京で商業やビジネスの開発が最も活発な「虎ノ門ヒルズ駅」エリアで、特許庁や各省庁及び顧問先企業へのアクセスもすぐという好立地に自社ビルを構えられ、日本はもとより、米国、欧州、中国など国際色豊かな多くのクライアントの知財管理など多方面で活躍されています。
歴史のある特許事務所ではありますが、常に最新のIT技術を駆使した業務のデジタル化を積極的に推進されており、今回共同開発させていただいた、AI検索エンジンなど先端技術を駆使したサービスでお客様の厚い信頼を得られています。
特許業務法人スズエ国際特許事務所
代表社員弁理士
赤堀先生
関根研究員
香取研究員
増える一方の文書量に、人手による特許調査には限界を感じていました。
元来の特許調査において、どのようなところを課題に感じていたのかを、赤堀先生にお伺いしました。
「特許調査においては、調査の速さと正確性が重要ですが、日本だけでも年間数十万件ある特許公開公報等の特許文献から、調査対象となる製品のキーワードに関連する特許文献を検索し、検索された文献の明細書や請求項を原則全文読む必要があるため、増える一方の文書量に、人手による特許調査には限界を感じていました。」(赤堀先生)
「特許調査で用いる一般の特許検索サービスでは、キーワードの組み合わせで全文検索します。したがって、類義語や言い回しなどを十分考慮して単語の検索式を生成しなければ、目的の特許文章を見つけることができません。
これらの業務は属人的であり、知識やノウハウを要するので、抜けや漏れのない調査をするには、非常に時間がかかり専門的な知識も必要とされます。
例えば、高周波回路を格納する「ノイズシールドケース」の調査に用いるキーワードの設定において、「高周波」AND「ケース」を検索キーワードにするだけでは、その検索キーワード以外で説明されている目的の特許文章まで網羅することはできません。
このことから、関連する「容器」「RF」「電磁波」「アンテナ」「空中線」「シールド」「防磁」「遮蔽」「雑音」「ノイズ」「S/N」…など、あらゆるキーワードの組み合わせを設定する必要があります。特に、設定したキーワードだけでは、探しきれない特許文章が残されている可能性も残ります。また調査漏れを防ぐために多くの単語を使えば、検査対象量が増えてしまい、要求時間内で調査ができる範囲を超えてしまうといった課題もありました。」(赤堀先生)
最近では、通常の出願依頼に加え、特許侵害予防調査(クリアランス調査)、特許無効資料調査の依頼件数が増え、これらの調査はお客様に何ヶ月もお待たせできないのが現状のようです。
そこで自然言語解析について実績のあったキーウォーカーへ、これらの課題を解決するためのご相談を頂きました。
このような課題解決のために、単語や文章のもつ特徴を評価する特許調査検索サービスを目指し、スズエ国際特許様とキーウォーカーによるAI検索エンジン開発のプロジェクトがスタートしました。
開発では、実務を担当されている、関根研究員、香取研究員に実務的なテストや検索結果の詳細なご評価など色々と工夫とご協力をいただきました。赤堀先生には、サービスに必要な工夫やアイデアなどを頂戴しました。
毎週課題をご提示いただき、改善を繰り返すといった処理を約半年続け、サービスリリースを行いました。
費用対効果がどれほどあるのか心配な面もありましたが、本稼働してからはそのような不安はすぐに払拭されました。
このAI検索エンジンでは、教師無し学習を利用し、日本語、英語、中国語での検索を可能にしました。教師無し学習を採用することで、お客様の「データ準備の負担軽減」「システムの省リソース化」「学習時間の短縮」を行うことができます。
まず、調査対象のIPC分類番号に含まれる特許文献の文章をAIエンジンで機械学習させ、その文章群の持つ単語及び文章の特徴をデータ化します。ここでは、単語の使われ方の特徴、例えば「高周波」「RF」は同じ意味なので、文章中の利用方法が似ており、かなり近い語としてマッピングします。文章も同様に、マッピングすることができます。
これらのマッピングデータを検索に応用することで、主だったキーワードだけでもそれぞれに意味の近い単語を高いスコアで評価出来るので、膨大な文章量の中から類義語や近似語などを含む文章を見つけることができるようになります。
例えば、「アンテナ」で特許文献を検索すると、「空中線」「ダイポールアンテナ」「ダイバシティーアンテナ」「高周波」「起電力」など、元文章セット(特許文献の母集団)に使われている、関連度の高い単語を自動的に評価して特許文献を検索してくれます。また、文章で検索すると、文章の意図が近いものを高いスコアで判定し、より近い特許文献を少労力で発見することができます。
実際のシステムでは、さらに絞り込みや再学習など様々な工夫を凝らし、より精度高く見つけやすくするなどの調整を行っています。 例えば、疑似的に請求項の文章を作成して検索し、検索結果の上位スコアの文を調査することで、少労力で効率よく必要な特許文献を見つけ出すことが可能です。
「AIを用いた検索には、始めのうちは半信半疑なところがあったのも事実です。費用対効果がどれほどあるのか心配な面もありましたが、本稼働してからはそのような不安はすぐに払拭されました。
AIが関連性の高いもの順にスコアリングをしているのですが、実際に本当に欲しい情報が上位に来ていたので、そのロジックの確実さに驚愕しました。」(関根研究員)
AI検索エンジン導入による効果は、業務効率化だけではなかったと、赤堀先生からお話をいただきました。
「業務が自動化されることで利便性が上がったのはもちろんですが、抜け漏れの無い正確な調査結果を迅速にレポートすることができるようになったため、特許調査の信頼性が向上し、調査依頼が大幅に増加しました。」(赤堀先生)
そして、導入効果を裏付けるエピソードも伺えました。
「あるお客様の話ですが、既に他の特許事務所で特許調査を終えたものの、根拠になる部分が弱いのではないかという不安があり、念のためということで、スズエ国際特許事務所へセカンドオピニオンとして再調査依頼が来ました。実際に調査結果を確認してみると、確かに根拠が弱いという結論になったため、AI検索エンジンを利用して再度調査を行ったところ、お客様が本当に必要とする特許調査データを短時間で見つけ出すことができました。以降は、そのお客様からは大いにご信頼いただき、“まずはスズエ国際特許事務所へ相談をする”という流れを作ることができました。」(赤堀先生)
新しい技術を活用したシステム導入に関するディスカッションをキーウォーカーと積極的にやっていきたいと考えています。
スズエ国際特許事務所としては、このAI検索エンジンを他の業務にも応用できないか検討中とのことです。
「特許調査のみでAI検索エンジンを活用するだけでなく、他の文献調査、意匠や商標の調査など、他の業務での効率化に応用することを検討しています。それにより、事業全体の信頼性が増していくと思うので、調査だけでなく、出願の依頼増加に繋がっていくのではないかと考えています。」(赤堀先生)
また、香取研究員からも、AI技術ならびに当社への期待を伺うことができました。
「AI領域の研究開発は日進月歩であり、今よりも良いものがいつか必ず出てくると思います。その時には遅れを取らないように、また他社様よりも一歩先にいられるように、最先端の技術を取り入れていきたいと考えています。そのためにも、新しい技術を活用したシステム導入に関するディスカッションをキーウォーカーと積極的にやっていきたいと考えています。」(香取研究員)
AI技術は日々進化し、キーウォーカーでも最新技術の評価や検証を通じて、より精度が高く効率の良いサービス開発のため、日々研究を続けています。
機械学習のみならず創業以来続けているセマンティック技術の組み合わせなど、自然文解析技術の発展に取り組んでいます。