収益を最大化するレベニューマネージメント

1.収益を最大化する、レベニューマネージメント

インターネットの発達のお陰で、売上が伸びている割には、収益率が減少し予測通りの利益が得られにくい状態は、近年多くの事業で課題になっています。 ネット環境が発達する以前の、消費者は売り手の情報を頼りに、サービスや商品の購入を行う、一方通行の状況でした。ネットの普及とともに、価格・商品やサービスの内容を手軽に比較して、売り手側の情報より多くの比較を行うことで、その消費行動が決定づけられるようになりました。

売り手側は、多くのサービスや商品のそれぞれについて、戦略や価格調査を行うには膨大な情報を収集分析する必要がありますが、消費者は購入しようとするサービスや製品について限られた範囲で、検索エンジンや比較サービスなどを使って比較的簡単に検討することが可能となり、商品購入時の情報量はむしろ売り手の情報を上回っているといえます。

ダイナミックプライシングシステムの詳細

ネットビジネスが売上の多くを担う企業にとって、この課題を克服するには、従来の販売戦略への改革が求められています。 近年、従来の商材や在庫から、増収を生み出すための販売戦略を立てる手法として、レベニューマネージメント(収益管理)が注目されています。 レベニューマネージメントを活用することで、利益の最大化をどのように行うのかを見てみましょう。

2.レベニューマネージメントとは

航空のレベニューマネージメントのケース

レベニューマネージメント(RM)は、イールドマネージメントとも呼ばれ、航空業界でいち早く導入され運用されている概念です。 例えば、航空チケット販売に提供される、早期購入割引などの「期間条件による割引」を用いた航空運賃などはその一例です。 例えば羽田から福岡へ旅行するシーンを考えてみます。 旅行者には下記のように幾つかのシチュエーションがあることがわかります。

  1. 秋の三連休に、家族旅行で九州旅行をする。
  2. 明後日に出張で、福岡のお客様へ打ち合わせに出かけることになった。

このように状況により、航空券を手配できるタイミングが変わります。 家族旅行の場合は、半年前からでも予約が可能でしょうし、できるだけ安い費用で移動したいと考えるでしょう。 仕事の急な移動の場合は、数日前に航空券の手配を行うことが殆どで、打ち合わせのスケジュールに重点が置かれるため、正規運賃でも購入します。 顧客の購入パターンを分析し、適正な価格を適正なタイミングで、適切な顧客に提供することで、空席を最小に抑え、利益を最大化します。

  1. 家族旅行向けには、早めに予約してもらう代わりに、低価格の運賃を提示し便の変更などに制限を設けます。
  2. ビジネス向けには、正規料金を提供し、代わりに、便の変更などにも柔軟に対応します。

レベニューマネジメントの基本的な考え方は、図1の通りです。

レベニューマネジメントの基本的な考え方(ホテルの事例)

30室あるホテルで、1万円で30室販売すると売上は300,000円
早割8千円で8室 ,1万円で10室,1万4千円で12室販売すると、売上は、332,000円となり、全部定価で販売して時より、32,000円、売上が多くなる。

RMの基本的な考え方

図1

早い者勝ちの方式で、一定金額で販売する場合と、顧客セグメント別に、市場を細分化して、ニーズに合わせて販売する場合を比較すると後者のほうが、○円の増収を見込めます。

このように、RMの適応には、事業運営に対する固定費が全体の多くを占め、ある期間をすぎると商品価値がなくなってしまうモデルに最もマッチします。また販売価格の変動を市場が受け入れられるサービスや商品でなければ成り立ちません。

RM導入効果の大きい業種には、航空業界・鉄道業界などの顧客輸送業、ホテル業界などの宿泊サービス業、レストランなどの飲食業、映画やコンサートなどの興行サービス業などに応用されています。

ホテル・料金・空室状況を可視化

ホテル・料金・空室状況可視化 ダイナミックプライシングシステムの詳細

3.レベニューマネージメントのポイント

RMを実践するには、まず何から始めるべきでしょうか? 消費パターンをもとに、顧客の行動分析をすることろからスタートします。 例えば、以下のように分類できます。

  1. 価格が高くても購入するセグメント
  2. 適正な価格であれば、購入するセグメント
  3. 安くなければ購入しないセグメント

それぞれセグメントでの消費(予約)パターンや量を分析して、セグメント別に在庫を割り振り、収益が最大になるように調整します。

書き出してみると、簡単に見えますが、実践のためには精緻なミクロマーケットの分析を行う必要があります。RMを導入できる事業モデルの場合は、消費に合わせてリアルタイムに在庫を増やすことができないため、分析を間違えると、予測通りの収益をあげられなかったり、損失を出したりする可能性も大きくなるためです。

例えば航空業界では、利用目的/発注スケジュール以外にも、路線/時間帯/曜日/季節/イベントなどを考慮して、便ごとに精緻な分析を行う必要があります。

4.レベニューマネージメントのための顧客セグメント分析

過去の売上情報から、顧客セグメントを割り出します。顧客の購買行動(購入の目的/時期/価格)からRMシミュレーションを実施し、商品の企画に活用します。

レストランを例に販売戦略を構築するとします。
販売できるテーブル数を2名20卓と仮定します。
(これが在庫にあたります。)

顧客を分類し需要を予測する。

顧客がサービスをどのように受け止めるかを、売価(サービス対価にたいする意識:幾らなら払う価値があるか?)をもとに分類します。

分類できた顧客ごとのバレンタインディナーコース予約の需要を予測します。 わかりやすくするために2種類の顧客に分類してみましょう。

  1. 【リーズナブルカスタマー】 タイミングよりコストパフォーマンス重視の顧客。
  2. 【プレミアムカスタマー】少し高くても良いので、バレンタインに食事したい顧客。

★2つの顧客セグメント別の需要量を、以下のように予測します。

  1. リーズナブルカスタマー:20組
  2. プレミアムカスタマー:10組

適切なサービスを用意する。

分類した顧客ごとに満足してもらえる、サービスを用意する。 今回は、リーズナブルカスタマー向けには、二人で1万円のコース、プレミアムカスタマー向けには、二人で4万円のコースを用意します。

収益が最大となる販売方法を検討する。

従来通り、早い者勝ちで予約を受け付けた場合
予約受付開始早期に、リーズナブルカスタマーのコース20名の予約を先に受け付けてしまうと、売上が20万円のみとなります。この場合は、プレミアムカスタマーの顧客が一組も購入できないことになり、当初に意図しない売上になってしまいます。
収益が最大になる売上を工夫した場合
収益を最大化させる、プレミアムカスタマーのためのコースを取り置き、リーズナブルカスタマー向けのコースは10組だけ予約を取ります。残りのテーブルを富裕層に割り当てることで、売上は、50万円となります。

このように、売り方の改善をすることで、30万円の増収を得ることができます。

効果の検証

実際の現場では、最初から期待通りにうまくいくことは先ずありません。現場では、テーブルの空きをなくすことにも気を使わなければなりません。指定された販売方法で空きが出てしまわないように、ある一定期間を過ぎたら、一般向けのコースを販売できるよう、予約制限解除するなどの工夫を行います。

需要予測に反して売れなかった部分を検証し、戦略を練り直すことで、修正を加えながら、販売方法を確立してゆくなどのプロセスが必要です。

また、競合店のプランや価格やその在庫を調査することで、マーケットの中で利益を最大に上げる方法を工夫する必要も検討されるべき項目です。

ダイナミックプライシングシステムの詳細

5.インベントリー管理

インベントリー(在庫)管理では、高価格帯の商品を優先的に販売するために、各価格帯の販売数を制限し利益の最大化を図ります。総需要量が在庫を上回るような場合は、低価格帯の商品の販売を止め、より高い価格帯の商品を販売します。

競合するマーケと全体の在庫をモニターすることで、在庫の安売りを防ぎ、利益を最大化させることができる。早期割引の売り過ぎにより、プレミアムユーザ向けの在庫がなくならないように、コントロールする必要がある。

競合するマーケと全体の在庫をモニター

ホテルのレベニューマネジメント

また航空運賃やホテル客室のように、同路線、同地域での販売価格や在庫数などを常にモニターすることで、自社の高価格帯サービスの販売機会損失を防ぐことも重要です。

例えば、同地域にあるホテルの同じランクの商品の残室数がなくなったら、その商品の低価格販売を止め、価格を上げて提供しても、需要が無くならなければ、より高い利益を生むことが可能です。

現在では、顧客運送、宿泊、映画などインターネットで予約が行えるサービスが主流になっており、その売価や残席数などを、Webスクレイピングを活用してリアルタイムにキャッチアップできるため、ITシステムを活用したモニタリングにより、需要をリアルタイムに予測し、商品別の在庫を管理することも可能です。

6.プライス管理

マーケットが購入タイミングによって、価格変動を許容するようなマーケットでは、商品価格自体を操作し、需要量を調整することによって、収益の最大化を図ることができます。

  1. 需要が在庫容量を超える場合は、価格を上げて需要を在庫容量以下に抑え、収益機会を増やします。
  2. 需要が在庫容量を下回る場合は、価格を下げて、需要を喚起することで在庫歩留まりを向上します。

このとき安売りが収益に与えるインパクトにも注意し、細やかに調整する必要があります。

マーケットの状況をよく観察し、タイミングによって細やかに価格をコントロールする必要がある。収益機会の最大化は、価格のコントロールに追うところが大きい。

プライス管理

7.レベニューマネージメントのためのPDCAサイクル

RMの実施モデルにより様々なバリエーションが考えられます。RMパラメータには、価格と需要のみならず、「行動変数」 ,「地理的変数」 , 「デモグラフィック変数」 , 「サイコグラフィック変数」などのパラメータに加え、気象、イベントなど様々なパラメータが含まれます。

目標とした収益が、予測モデルとどのくらい乖離していたのかなどを、定期的に評価し修正する必要があります。

このようなPDCAを繰り返しながら、販売戦略をチューニングすることで、常に収益の最大化を目指す必要があります。価格戦略だけでなく、組織や商品のバリエーションなど様々な調整を行い、シミュレーションを行えるシステムを構築することで、常に変化する市場を見据えた確実な販売戦略を構築することをめざします。

8.レベニューマネージメントを実践するには

レベニューマネージメントを実践するには、幾つかのポイントがあります。

組織の最適化

業務の担当領域において、それぞれの立場で予約の販売についての考え方が違います。

RMを実践しても、販売担当者がRM管理(在庫とプライシング管理)を行った場合、低価格帯の在庫がなくなった場合、空席への不安が払拭できず、高額用の在庫を安い金額用に販売してしまうことも十分に考えられます。

RMの実践では、プライシングと在庫管理を担当する部署と、販売を担当する部署を分け、販売担当者の権限に制約を設けることで、目的に合致した運営が可能となります。

ITシステムの活用

前述の通り、インターネットでの販売が主力を占める業態では、自社のみならず同じ商圏にある同業他社の価格や在庫を参照しながら、RM戦略を立てる必要があります。

取扱商品数や競合先が少ない場合は、手作業で競合状況を観察しながら、価格や在庫の調整を行うことも可能ですが、一般的に多くの商品を取り扱う場合は、人手では追いつきません。

ITシステムを活用することで、RM戦略時のシミュレーション、商品の企画、目標の設定、リアルタイムな市場の調査、リアルタイムな価格の調整などにより、収益を最大化させる効果を高めることができます。

キーウォーカーのWebスクレイピングは、貴社のRMに必要な情報をインターネットから収集し、最適なRM戦略に必要な情報及び分析システムを提供します。

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