2019/03/09 著者: 山本 喜士朗

海外の不動産テック企業の事例【15社】を紹介

金融領域とテクノロジーの融合を指すFintec(フィンテック)も、ニュースやメディアに頻繁に登場し、耳新しい言葉ではなくなりました。〇〇テックと呼ばれる分野では、新たな技術が芽吹き、ベンチャー企業や新サービスが続々と登場しています。

このページで紹介する不動産テック企業

  1. 1社目:IT技術でユーザーのニーズにマッチするサービスを提供する【Open Door Labs】
  2. 2社目:利用者にもエージェントにもオープンで公平な金額や情報をシェア【Compass】

『従来のシステム』と『〇〇テック』の違いとは?

従来システムでは、業務効率向上など、従来業務の置き換えが主眼とされてきました。

一方〇〇テックの裏側には、大量のデータ(BigData)やIoTを始めとする最新のテクノロジーを新しいアイデアで活用し、今まで考えられなかったサービスを提供することで、人々の価値観や生活スタイルに大きな変化をもたらしています。

不動産領域でも『不動産テック』で、新しいサービスや便利なサービスが、人々を引きつけビジネスの効率を一層高める機運が高まっています。

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不動産テックとは

不動産テック協会の定義によると、不動産テック(Prop Tech、ReTech:Real Estate Techとも呼ぶ)とは、不動産 × テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みと定義されています。

今までの不動産業界は、ベテランの勘所や人手による業務が多く、システム化により革新的なサービスを提供出来る余地が多く残されています。

すでに多くのサービスが顧客のニーズに応えており、不動産売買に加え、マーケティング、VR/ARによる内覧、AIによる不動産売り出しの予測や投資判定など幅広く新しいサービスが生み出されています。

政府もIT技術促進のため、2017年10月より、不動産会社は契約時の重要事項の説明を非対面で行えるよう規制緩和しました。

海外の不動産テックは日本より進んでいる!

アメリカでは、1990年代後半より不動産広告がインターネットで盛んに行われるようになり、現在では不動産情報のネットワークがしっかりと整備されています。

MLS(Multiple Listing Service)と呼ばれるこのネットワークは、不動産の実売買履歴を公開し、取引を支援することを主目的に作られました。

消費者向けに公開されたMLSも存在し、アメリカの消費者はMLSのサイトにアクセスして簡単に不動産の実売価格の履歴を閲覧することができます。

日本では、顧客と業者の情報非対称性が依然として存在し、消費者が安心して取引できないというジレンマは、多くの不動産関係者が認識するところだと思います。

国交省は2006年から不動産市場の信頼性と透明性を高め、不動産取引の活性化を促進するため、不動産取引価格の公開を図ってきました。

しかし現状では、この課題(情報の非対称性)は解消されていません。

今回は、躍進が著しい海外事例を紹介し、皆様の新しいサービス考案の参考にしていただければと思っております。

IT技術でユーザーのニーズにマッチするサービスを提供する不動産テック企業

Open Door Labs, Inc.(オープンドア)Open Door Labs Webサイト

Open Door Labs, Incの特徴

  1. 『オンライン不動産買い取り再販』を実現した不動産業界のイノベーター
  2. 独自アルゴリズムで不動産を査定!売り主に2日で現金買い取りオファーを提示!
  3. 買い主へ2つの保証!「30日キャッシュバック保証」「2年の修繕保証」で安心

Open Door Labs, Inc.は、2014年3月、「不動産業界を、シンプルに」することをミッションとし、Keith Rabois(キース・ラボイス)、Eric Wu(エリック・ウ)、Ian Wong(イアン・ウォン)、JD Ross(ジェイディー・ロス)の4人によって創業されました。主要事業はオンライン買い取り再販と呼ばれるビジネスモデルです。

「オンライン買い取り再販」の実現は難しいといわれており、満足度の高いサービスの仕組作りや、精度の高い予測などの技術を始め資金力がなければ成し得ませんでした。

Open Door Labs は、いち早くこのサービスを提供し高い評価を得ています。

売買どちらもオンラインで申し込みでき、システムにより迅速で透明性の高いサービスを実現しています。

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Open Door Labsの不動産買い取り

特徴

売り主は、登録後短期間で、現金買い取り金額が提示され、決定すればすぐに実行される。

手順

  • 不動産の売り主はオンライン上で物件情報(自宅の住所や築年数、修繕/改修の履歴など)を入力し送信します。
  • Open Door は独自の技術で買い取り価格を査定し、2日以内に現金買い取り額の仮オファーを送ります。
  • ホームアドバイザーが電話で相談を受け、懸念事項を解消。
  • 正式な買い取り金額が通知され、合意すれば家の診断を受け修繕費などを差し引いた額で買い取ります。

不動産売却の流れ

不動産売却の流れ

従来、中古物件の売買には売り主にとって不透明な手続きや管理料などがあり、長い時間を要してきました。Open Doorを使えば、取引のすべてをクリアにし、劇的に早く商談を進めることができます。また、買い取り時の支払いも直ぐに行われるので、安心取引が可能です。

Open Doorの仲介手数料は一般的な不動産取引手数料より数%割高であるにもかかわらず、迅速、クリアな処理、現金買い取りなどのメリットで、多くの売り主の賛同を得ています。

Open Door Labsの不動産の販売

買い主への「2つの保証」。独自技術で利便性を向上。

30日間キャッシュバック保証

購入した中古物件に住んでみて納得できない場合、30日以内であれば販売手数料と購入代金をキャッシュバックします。このキャッシュバック制度は、Open Door が初めてです。

参考リンク【業界初の返金保証について】https://www.onlinemarketplaces.com/articles/13211-opendoor-offers-industry-first-money-back-guarantee

2年間の修繕保証

多岐にわたる修繕保証を通常の2倍の期間で提供しています。

アメリカでの一般的な保証期間(1年)を倍にしています。また、多くの項目をカバーすることで、ユーザーへの安心と信頼を提供しています。

スマートフォンを活用!物件を自由に内覧できる仕組み

購入希望者へのサービスも、オリジナルの技術で様々な利便性を提供しています。

例えば、Webで内見を申し込み、「鍵」をスマートフォンにダウンロードし、購入希望者が内見物件の解錠を行えるのも、その一つです。

不動産業者に頼らず気軽に物件を内覧できるため、一般取引に比べて物件あたりの内見数が多く、活発な取引が行われています。

不動産買取の流れ

不動産買取の流れ

事業発展と投資

Open Doorは、2008年にアメリカで発生したサブプライムローン問題後に創立した企業です。処分したい不動産が売れにくい市場縮小期でも、現金買い取り保証で短期に住宅を処分できるこのサービスは多くの利用者を獲得できると予測しています。

この様に消費者への人気が高く、景気に左右されない業態への期待から、Open Doorの市場の評価も高く、2018年9月にはソフトバンクビジョンファンドから450億円の資金を調達しています。

Open Doorは未上場ですが、推計値の時価総額は日本円で2200億円といわれています。

新しいサービスやビジネスの創出に、「顧客の立場に立った不動産取引に徹するOpen Door の企業姿勢」は大いに参考になります。

Open Door Labsの基本情報

会社名:Open Door Labs, Inc.
会社URL:https://www.opendoor.com/
国籍:アメリカ

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Compass Inc.(コンパス) Compass Inc. Webサイト

ゴールドマン・サックス証券株式会社の元COO Robert Reffkin氏、元GoogleのエンジニアOri Allon氏によって誕生しました。出資者には、Salesforce.comのCEO Marc Benioff氏やアメリカンエキスプレスのCEO Kenneth Chenault氏など超有名人によって構成されています。

2017年には、Eラウンドでソフトバンク・ビジョンファンドから4億5千万ドルの調達(当時不動産では最高額と言われた)をするなどの話題も豊富で、総額で12億ドルもの資金を調達しており、そのビジネスへの高い評価を受けています。

COMPASSの主な事業は、売り主から買い主への仲介を支援するプラットフォームで、顧客/エージェント/ブローカーをスムーズにつなぐプラットフォームサービスを提供しています。

アメリカでの不動産取引は、顧客がエージェント(顧客の代理人)に依頼し、ブローカーを通じて不動産の売買が行われるのが一般的です。つまり売り手も買い手も信頼の置けるプロのエージェントに交渉を任せることで、公正な取引を行うことが普通です。

ブローカーを通じて不動産の売買が行われる

有資格の代理人を立てることで取引をスムーズに、公正に行える。


日本で一般的な両手取引は、利益相反となるとして禁じられている州もあるぐらいです。

COMPASSの特徴

他のサイトとの差別化

ラグジュアリーマーケット(比較的高額な物件や賃料)にフォーカスし、マーケットを絞り込み効率良く高い収益性を確保しています。

顧客向けサービス

売買を希望する顧客は、信頼の置けるエージェントをCOMPASSのサービスで選択契約します。エージェントの取引履歴や評価などを公開しており、信頼の置ける仲介者を比較し探しやすいサービスを提供しています。

信頼の置けるエージェントをCOMPASSのサービスで選択契約

信頼の置ける仲介者を比較し探しやすいサービスを提供


とくに、美しい画面構成は、ハイクラスユーザのニーズにマッチするように、様々な工夫がなされています。

紹介内容も豊富で、個人事業主である、エージェントの人となりがわかるような、写真、動画、経歴、学歴、受賞歴、実績…と幅広い情報を可視化された情報を比較することができます。

エージェント向けサービス

エージェントへは、ワンストップで業務を行える使いやすいサービスを提供しています。

例えば、見込み客の信頼を得る為の紹介ページを、美しく充実し顧客受けのするページを簡単に作れる機能で、顧客へのアピールとアプローチができるようになっています。

美しく充実し顧客受けのするページを簡単に作れる

実務では以下の機能を提供しています。

  1. COMPASSでセレクトされた不動産から顧客への提案機能
  2. マーケティングセンターと呼ばれる不動産紹介ページや印刷物を作成する機能
  3. 各種取引状況をモニタリングし、可視化できる機能
  4. 必要な機能や情報を整理して、スマートフォンアプリを使いコントロールできる機能
各種取引状況を可視化してモニタリングできる機能

また顧客とのコミュニケーションをスムーズに行える機能など、テクノロジーにより業務全般をサポートすることで、エージェントはビジネスに専念でき高い生産性を手に入れることができます。

コミュニケーションをスムーズに行えるスマートフォンアプリ

コンパスは、一見不動産業むけの単純なサービスに見えます。しかしながら、以下のような様々な技術で他との大きな差別化を図っています。

  1. BigデータとAIを活用した様々なレコメンド
  2. 可視化をフルに活用し、顧客へも事業者へもわかりやすい情報を提供
  3. 該当物件や類似物件情報との比較情報の提供(取引履歴などを含む)
  4. 最新のUI/UX技術で美しく使いやすいレイアウトでの顧客やユーザへのアピール
  5. スマートフォンを最大活用した機動性あるサービスの実現
  6. 充実した近隣情報(例:駅、シッピングエリア、公園、観光施設、マーケット、ライブハウス、カフェ、学区、学校の教育レベルと安全性、等々)

利用者にもエージェントにもオープンで公平な金額や情報をシェアさせることで、不動産業務の高い効率向上を図るサービスとして今も発展しています。

Compass Inc.の基本情報

会社名:Compass Inc.
会社URL:https://www.compass.com/
国籍:アメリカ

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