海外の不動産テック企業15選 Part.3はこちら
このページで紹介する中国の不動産テック企業
- 12社目:ホストの負担を低減し登録物件数を増加、民泊文化の定着を目指す【小猪(シャオチュー)】
- 13社目:実店舗とオンラインの合わせ技で中国市場を圧倒【链家(リンジャー)】
- 14社目:スタッフレスでIoT化されたコーワーキングオフィスを提供【优客工场(ユーコミューン)】
- 15社目:長期滞在型レンタルアパートメントの開発・運営【魔方公寓(モーファンゴンイー))】
- ※ 破綻:不動産業界に価格破壊をもたらした不動産エージェント【爱屋吉屋(アイウージーウー)】
ジャック・マー氏率いる投資グループから約330億円の資金を調達したユニコーン企業!中国版Airbnb「小猪」
小猪(シャオチュー)
*小猪(シャオチュー)は北京を拠点とした民泊プラットフォームサービスです。2012年にTarry Wang Lintao氏がKelvin Chi Chen氏と共に創業。
2017年にYunfengCapitalから1.2億米ドルの資金調達を果たし、ユニコーン企業の仲間入りしました。2018年10月にはアリババ・グループのジャック・マー氏から3億米ドルの資金調達に成功した同社はIoT技術を駆使し、より利便性の高い民泊サービスを実現させることを目指しています。
※小猪は中国語で「子豚」という意味
小猪(シャオチュー)の特徴
- 2012年のローンチ以後急成長を遂げ、中国版Airbnbとして高い知名度を誇る。
- ホストとゲストをつなげる単なるプラットフォームという役割だけでなく、撮影や掃除、受付業務などのサービスを一括提供することで、より多くのホストを獲得することに成功。
- 日本市場にも2017年から参入しており、2019年4月には住宅宿泊仲介業者として登録済み。
- 企業評価額は約1100億円と言われている。
ホスト重視のサービスを提供することで戦略的に市場を活性化
中国の習慣にはない「知らない人に自分の家を使ってもらう」ということに対する心理的なハードルを取り除くため、ホスト側に対するサービスを手厚くしていることが小猪の特徴です。
新しくホストになる人たち向けの研修、部屋の設備調達や写真の撮影、清掃業務および受付業務までを支援するチームを作り、ホストの負担を極力減らすことで登録物件数を増やし、民泊文化の定着を目指すという戦略が功を奏し、小猪は成長を遂げました。
リピーターの獲得およびリピーターによる口コミ経由でサービスは拡大を続け、現在では登録物件数50万件以上、中国国内のほぼ全ての大都市でサービスを展開しています。
顔認識によるスマートロックシステムを全ての物件に導入予定
現在、小猪は成都市の民泊物件で顔認識によるスマートロックシステムのテストを行っており、将来的には中国すべての都市の物件に導入していく予定です。スマートロックを使えば、物件の安全性が高まるだけでなく、ホストによるリモート操作も可能になります。
これにより、急な予約が入った場合でも、できるだけホストに負担をかけずに対応できる仕組みを実現できます。また、民泊プラットフォームというよりも包括的なサービスプロバイダーである、と自らを位置づけており、警報機やガス検知器などスマートデバイスをホストに提供し、IoT技術の活用が可能な環境を整えることで、民泊業界が直面している問題を1つずつ解決していくことをミッションとしています。
その野心は中国のみにとどまらず海外展開にも積極的!
海外展開にも積極的で、ホテル予約サイトAgodaやアリババグループのFliggyとも戦略的パートナーシップを2018年に締結しています。
2017年から日本の民泊市場にも参入しており、2019年4月には住宅宿泊仲介業者としての登録を済ませています。日本市場は中国人観光客にとって人気が高いため、日本市場での掲載物件を今後増やしていく計画のようです。
物件数が増えれば、当然ユーザー数もそれに伴って増加するため、小猪の名前を目にする機会は今後ますます増えそうです。
小猪の基本情報
会社名:小猪(シャオチュー)
会社URL:https://www.xiaozhu.com/
国籍:中国
データからマーケットの未来を予測することで急成長!「链家 LianJia(リンシャー)」
链家 LianJia(リンシャー)
掲載物件数7000万件以上、実店舗8000店を有する中国最大の不動産仲介業者
链家 LianJia(正式名称 鏈家地產)は2001年に中国北京にて創業された不動産仲介会社です。1971年生まれの左暉(Zuo Hui)氏が創業。
マーケット分析を行い、近未来に起こるべく変化を予測し、それに沿った戦略を構築し実践する、という経営方針で創業当初わずか27人の組織だった会社を従業員15万人以上。実店舗8000店以上という大企業へと急激に成長させました。
链家(LianJia)の特徴
- Lianjiaは中国最大の不動産仲介業者。会社名はHomelink、または鏈家地產。北京、上海、深セン、広州などの主要都市を含む30都市以上でサービスを展開中。
- 新築物件、中古物件、賃貸などの一般的な不動産仲介業だけでなくリフォームや金融分野まで多岐にわたるサービスを提供。
- 7000万件を超える物件情報が掲載されたスマートフォンのアプリやインターネットのオンライン情報と8000店舗以上あるオフラインの実店舗のそれぞれが持つ強みを生かしたO2O(Online to Offline)分野での取り組みが特徴的。
- 2018年、テンセントから10億ドルの資金調達を受けたユニコーン企業。2018年12月時点での評価額は約6270億円。
链家の軌跡:成長の秘訣は顧客に対して誠実であること
Homelinkは北京の不動産業者として2001年に創業されました。2003年に中国建設銀行と中古物件取引資金委託管理契約を締結し、当時は珍しかった顧客の資産を保護する、という視点をサービスに取り入れたことで、ユーザーからの信頼を得ることに成功。2006年には実店舗300以上を構える大手不動産業者へと成長しました。
2010年にはあらゆる不動産情報を取り扱うLianjia.comをローンチさせました。2011年には中国の消費者保護協会の補償金制度へ参加。その後も、巨額の賠償金基金を設立するなど、顧客保護のための戦略を打ち出し続けています。
オンライン動画による新築物件の紹介など、これまでになかったサービスにも積極的に取り組んでいます。
実店舗とオンラインの合わせ技で中国市場を圧倒
彼らの1番の強みはなんと言っても7000万件を超える物件が掲載されたオンラインプラットフォームと、8000店舗以上で展開されているオフライン事業の両方を併せ持っていることです。
それだけでなく、ユーザーからの信頼を得ることを優先事項とし、オンライン・オフライン問わず、ユーザーにとって不利益となる不動産取引の撲滅に尽力しています。例えば、提供されている情報が不正なものだった場合や架空のものだった場合、その情報が不正であることを報告した人に報酬を与える制度も導入されています。
またエージェントが行った実際の取引内容やユーザーからのレビュー評価をオンラインで公開することで、公正な取引が行われることを促しています。
創業者の左暉氏とはどんな人物?
創業者の左暉氏は1971年生まれ、北京化工大学のコンピューターアプリケーション科を卒業し、北京大学でEMBAを取得。
彼は中国不動産マーケットの中古物件市場が北京などの大都市から中規模のいわゆる副都市に移動しつつある傾向を人口分布などから予測し、先回りして新店舗を出店したり、副都市の不動産業者を買収することで事業を成長させて来ました。
またインターネットを使ったO2Oプラットフォームの運用にもいち早く取り組んできました。今後は民泊のようなCtoCの短期滞在事業など彼らの得意分野であるテクノロジーを駆使し、さらなる成長を遂げていくことが期待できます。
链家 LianJia(リンシャー)の基本情報
会社名:链家(LianJia:リンシャー)
会社URL:https://bj.lianjia.com/
国籍:中国
調達資金総額600億円のユニコーン企業 「优客工场(UCOMMUNE)」
优客工场 UCOMMUNE(ユーコミューン)
M&Aを繰り返し、中国最大のコワーキングスペース会社へと成長を遂げる
优客工场 UCOMMUNE(ユーコミューン)は北京を拠点に事業を展開するコワーキングスペース会社です。2015年に毛大慶(Mao Daqing)氏 が創業。
上海、シンガポール、香港、ニューヨークなどを含む世界中の都市で事業を展開しており、中国ではWeWorkについで2番目に大手なコワーキングスペースプロバイダーです。
デジタル技術を駆使した運営が特徴で、スタッフレスでIoT化されたスマートコーワーキングオフィスを提供。創業者の毛大慶氏はコワーキング事業を、使用されていないスペースを有効活用しつつ、若い起業家にビジネスチャンスを提供する一石二鳥のビジネスモデルだと考えています。
优客工场(UCOMMUNE)の特徴
- UCOMMUNEは中国コワーキングスペース業界のユニコーン企業。従業員300人以上、160拠点以上で事業を展開。5000社、12万人の個人メンバーに仕事場を提供している。旧称URWork。
- 資金調達とM&Aを繰り返す戦略で事業規模を拡大。今後数年で中国のコワーキングスペース数を300拠点に拡大する計画を明らかにしている。これまでに6億5000万ドルもの資金を調達。
- 2018年8月時点での企業価値は約2030億円だったが、その後わずか3か月で約3380億円まで急騰。
- IoTを導入したスマートオフィスなど、デジタル技術の活用を得意とし、競合他社との差別化を図っている。
創業初年に100社だったテナントが翌年にはなんと1000社に。破竹の勢いで成長を続けるUCOMMUNEの軌跡
2018年11月にUCOMMUNEはDラウンドで香港全明星投資基金領投、中国投行易凱資金などから投資を受け、2億ドル(約226億円)の資金調達に成功しました。
UCOMMUNE社は創業わずか3年で累計6億5000万ドル(約700億円)という驚愕すべき金額の資金調達を行なっています。その理由として、「投資家はUCOMMUNEのコワーキングのエコシステムを開拓する能力やスマートオフィステクノロジーに対して大きな期待を持っています」と創業者の毛大慶氏は述べています。
UCOMMUNEのテナントにはTikTokの運営会社でテンセントをも脅かすと言われているユニコーン企業「バイトダンス」やショートムービーの「快手」などがおり、UCOMMUNEだけでなくテナントが持つ勢いも少なからず後押ししているのではないかと推測できます。
調達した資金は今後3年間で、世界40カ国、350都市に事業を拡大するために使われる予定だということです。
ビジネスとは将来の消費者たちの本当のニーズに応えること!?まだまだ拡大を続ける中国のコワーキングスペース事業。
中国各地には使用されていないオフィスビルが数多くあり、毛大慶氏はこれらの有効活用がビジネスチャンスになると考えました。さらに、コミュニティーサービスというこれまでにあまり重要視されてこなかった「人と人とをつなげる」ところに着目したことが若い起業家たちから支持され、UCOMMUNEは劇的な成長を遂げました。
「中国の不動産業は若い労働者たちが求めているオフィスのような将来の消費者たちのニーズに応えられていない」と毛大慶氏は新華網に話しており、コワーキングスペース事業だけでなく不動産業において事業拡大が可能であることを示唆しています。
中国のコワーキングスペース事業は2018年に前年比159.3%の成長を遂げており、今後も成長が続く見通しとなっています。
优客工场(UCOMMUNE)の基本情報
会社名:优客工场(UCOMMUNE:ユーコミューン)
会社URL:https://www.ucommune.com/
国籍:中国
家賃相場は初任給程度!?高級家具付きサービスアパートメント「魔方公寓(Mofang Apartment)」
魔方公寓 Mofang Apartment
(モーファン アパートメント)
魔方公寓(Mofang Apartment)がアメリカの投資家からも注目される理由とは?
Mofang Apartmentは長期滞在型レンタルアパートメントの開発・運営を手がける会社です。中国の主要20都市で7万件以上の物件を運営しています。
各部屋には家具や家電製品など生活に必要なものが全て揃えられており、すぐに生活が始められるようになっています。機能性だけでなくデザイン性も高い作りになっていて、家賃も少し高めに設定されていますが、ジムやカフェなどの設備が充実しているケースが多いのが特徴です。
高学歴で比較的裕福な20代後半から30代のホワイトカラー層を主なターゲットとし、安全で快適で便利なワンランク上の住宅環境を提供しています。
魔方公寓(Mofang Apartment)の特徴
- Mofang Apartmentは中国の長期滞在型のレンタルアパートメント事業最大手。2009年に上海を拠点に創業。
- 2016年に中航信托(AVIC Trust)から3億ドル(約323億円)の資金調達に成功し、ユニコーン企業となる。これまでに5億5000万ドル(約591.5億円)の資金調達に成功。
- 上質な暮らし方を提供する長期滞在型のサービスアパートメントでありながら、簡単な手続きのみで入居可能なため人気が高まっている。
魔方公寓(Mofang Apartment)成功の裏事情:中国の大都市にはワンルームマンションが少ない!?
中国の人がマンションを探す際に最重要視するのは「面積」です。マンションは「毛坯(マオピー)」と呼ばれる内装工事前の状態で取引されることが多く、間取りに対していくら、という計算ではなく1平方メートルあたりの単価で不動産価格が決まるのが中国では一般的です。
そのため、1LDKやワンルームといった面積の狭いマンションは投資価値が低く、単身者も3LDKなど大きめのマンションをルームシェアして暮らすことが一般的なため、一人暮らし用のマンションにはほとんど需要がありませんでした。
ですが、Mofang Apartmentが提供しているような一人暮らし向けの快適な住居スペースに対するニーズは若い世代を中心に増えつつあります。ちなみに賃料は主要都市で5000元(7.8万円)、地方都市では3000元(4.7万円)から、だそうで、2018年の初任給の平均は5044元だったそうなので、日本で言うと一人暮らしのマンションに20万円くらい払う感覚のようです。
2019年3月にも1.5億ドルを調達。これまでになんと5億5000万ドルの資金調達に成功。潤沢な資金を何に使うのか?
Mofang Apartmentは2016年には中航信托(AVIC Trust)から3億ドル(約323億円)を調達。また、2019年3月にはケベック州投資信託銀行(CDPQ)から1.5億ドル(約161.5億円)の資金調達に成功したばかりです。
Mofangの会長職に就任したAlex Zheng氏はこれに対して「これまで活用されていなかった物件を長期型のレンタル物件に変えることでMofangは中国の住宅事情に新しい風を吹き込んでいます。
これは人々のニーズを満たしつつ、都市の再生を促している状態です。これまでの10年で培った経験を活かし、Mofangは今後も都心型のアパートの建築・運営に積極的に参加し、街の生活環境の向上に協力したいです」とコメントしています。
また、MofangのCEOを務めるKitty Liu氏は、「今回調達した資金はブランドの市場プレゼンスの向上、運営キャパシティーの拡大、ITシステムおよびリワードプログラムの充実、M&Aの促進、フランチャイズ事業の拡大に充てる予定です」と語っており、さらなる事業拡大に期待が寄せられます。
サービスアパートメントのシェアは今後より拡大する!?
賃貸業界全体で考えるとサービスアパートメントが占めるシェア率はまだ10%未満なため、この業界のポテンシャルに期待している企業や投資家も多く存在します。
また、E+青年公寓(E+ Youth Apartment)が提供する若者向けのサービスアパートメントなど、選択肢も増加傾向にあり、ますます競争は激化しそうです。E+青年公寓の創業者である張威加氏は「市場主導型だったサービスアパートメント市場はすでに経営主導型へと移行し始めています。
業界全体の利益率も下がり始めています。今後は、より効率的な運営、顧客のニーズに沿った上質なサービスの提供が不可欠です」と現在の市場についてコメントしています。
また、アメリカの投資家もまだまだ伸び代が期待できる中国のレンタルアパートメント市場に注目しており、Danke ApartmentsやQingKe、ZiroomといったMofangの競合企業に投資を開始しています。
魔方公寓(Mofang Apartment)の基本情報
会社名:魔方公寓(Mofang Apartment:モーファンゴンイー)
会社URL:https://www.52mf.com.cn/
国籍:中国
業界最速でユニコーン企業に成長したオンライン不動産エージェント「爱屋吉屋(IWJW)」がわずか5年で破綻した理由とは?
爱屋吉屋 IWJW(アイウージーウー)
不動産仲介のオンラインプラットフォームを運営し、不動産業界に価格破壊をもたらした爱屋吉屋(IWJW)は業界最速でユニコーン企業に成長した会社として一躍有名になりました。
しかしその後わずか5年で破綻。現在では全てのサービスが停止されています。ユニコーン企業の突然の倒産は多くの人を驚かせました。
爱屋吉屋(IWJW)の特徴
- 爱屋吉屋(IWJW)はサイトとアプリを使って不動産物件をオンライン検索できるO2Oプラットフォームを運営。2014年に創業。
- わずか18ヶ月で3億ドルの資金調達に成功し、ユニコーン企業に。
- その後わずか5年で破綻。2019年1月に全てのサービスを停止。
「古い体制の不動産業者を排除する」を合言葉に急成長。創業からわずか18ヶ月でユニコーン企業に。
2014年に中国版のYouTubeとも言われるオンライン動画プラットフォーム土豆(Tudou)の元従業員3名によって創業されたIWJW(アイウージーウー)はインターネット時代の不動産業者と自らを位置づけ、物件の売り手と買い手、貸し手と借り手を結びつけるプラットフォーム事業をiwjw.comのサイトで展開していました。
「古い体制の業者を排除する」という攻撃的なスローガンを掲げ、インターネット上で住居物件を検索するだけでなく、検出された物件のバーチャルツアーまで行える仕組みを実現させました。そして借り手はスマートフォン経由で内見の予約も簡単にできるような仕組みになっていました。
また情報の正確性を担保するため、掲載されている物件が実在するかどうかのバックグラウンドチェックも行っていました。ヒルハウス・キャピタル・グループやGGVキャプタルなどから出資を受け、わずか18ヶ月で3億ドルの資金調達に成功。
2015年には評価額が10億ドルに達したこともありました。2015年の上海では、中古物件の取引件数が単独2位と飛ぶ鳥をも落とす勢いで、「業界最速でユニコーン企業に成長した会社」としてその名を轟かせました。
しかし、そのわずか4年後の2019年1月末には全ての事業を停止させ、IWJWは清算手続きを開始しました。現在ではウェブサイトやアプリを含む全てのサービスが終了しています。
ユーザーにとっても従業員にとっても好条件。ではなぜIWJSは破綻したのか?
北京や上海など中国の主要都市の発展を受け、地方都市で暮らしていた若い世代の人たちの多くが大都市に移住してきました。これにより、賃貸物件に対する需要は急激に増えました。
しかし、高い仲介手数料を取りながらも効率的とは言い難い従来型の不動産業者は突然増えた需要に対応できませんでした。そんな時、インターネットやモバイル機器を駆使したIWJWのサービスが彗星のごとく出現したのです。
IWJWのターゲットは若者世代であり、スピード感のある契約の成立と安い仲介手数用を実現させるO2O不動産物件仲介業者と自らを位置づけていました。多くの若者にとってIWJWはまさに渡りに舟の救世主でした。
IWJWは情報の透明性、正確性、タイムリー性の3つを消費者に対して保証していました。通常であれば仲介手数料は家賃1ヶ月分ですが、上海の賃貸物件に関しては仲介手数料無料、北京の物件に関しては50%のディスカウントを謳っていました。
その代わり物件売買に対しては1%の手数料をチャージするという料金体系でした。また、従業員に対しても他社の2倍程度という手厚い給与体制を、顧客に対してはクオリティの高いサービスをそれぞれ約束していました。
ユーザーにとっても従業員にとっても全方向に耳触りの良い話なので、事業は順風満帆に成長しているに違いないと思われがちでしたが、正にこれが驚愕のスピードでIWJWが破綻した原因でもあります。
例えば、仲介手数料無料というのは仕事をしても利益は出ないわけですから、業務量が増えれば増えるほど、損失は増えていきます。文字通り事業状況は火の車となり、天下のユニコーン企業は札束を燃やして走るだけの夢の電車と化していたのです。
IWJSの破綻が意味すること:インターネットプラス事業の終焉
IWJSの破綻は2014年に盛んになった「物件+金融+インターネット」を組み合わせたビジネスモデルが中国で機能しなくなったことを示唆しています。
これはインターネットと従来型の事業を掛け合わせる「インターネットプラス」と呼ばれる形態です。IWJSの破綻は、「インターネットプラス」だけではもはや事業が成立しないことを示す1つの「終わりの始まり」かも知れません。
実際、ユニコーン企業の代表格だったシェア自転車サービスのモバイク(摩拜单车)やofoなどに関する不穏なニュースが届き始めています。中国経済は2019年後半に急降下する、と予測する専門家もおり、現在順風満帆に見えるテック企業が破綻する姿を目の当たりにする可能性もないとは言い切れません。
お金はやってきた時と同じスピードで去っていく、というのはもしかしたら時代や国を超えた一つの真実なのかも知れません。
爱屋吉屋(IWJW)の基本情報
会社名:爱屋吉屋(IWJW:アイウージーウー)
会社URL:https://www.iwjw.com/
国籍:中国
海外の不動産テック企業15選
No.1 | 日本よりも進んでいる!海外の不動産テック企業15社のまとめ |
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No.2 | 業界の破壊者となるか!?インドの不動産テック企業OYOが日本進出! |
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No.4 | 日本人が知らない「中国の不動産テック企業」驚きの実態を解説 |
ネット普及以前から、IT業界で30年以上勤務。
ハードソフト両面でのネットワーク普及からネットコンテンツの創出運営まで幅広い業務を経験。
趣味:模型グライダー